SHIENA WORLD

白金百景

1 私たちの街

18.02.01

人は植物と違って、住みたい所に住むことが出来るけれど、

人と街は、お互いが引きよせ合っているようだ。

だから、あらゆる街に、あらゆる人が縁を持って住んでいる。

 

街は、地面から勝手に生えてきたわけでは無く、

人々が創り、使って来た、作品であり、道具のようなものでもある。

目的や地政学的な特徴を活かし、湾があるから港を創ったり、

逆に特徴を殺して埋め立てて陸を創ったり、削ったり。

様々な歴史、つまり人の生活や手の跡があるものだ。

人が化石や遺跡にワクワクするのも、そういう事なのだろう。

 

シエナの新人は、地域にチラシを撒くことから始める。

街をカラダで知るため、まだ馴染みのない街に出てゆき、

チラシを撒きながら「私はこの街で働きます」と挨拶をする。

街に働きかけ、道行く人々を観察し、カラダで関わり、匂いを嗅ぐ、

路地に入ってみる、目で看板の文字を追う。

 

目黒通りの雨が上がると、都ホテル越しに、東京湾に大きな虹が掛かる。

夕方は犬の散歩が増え、コウモリを見かけ、猫が小路に逃げ込む。

 

街は生きているから、久しぶりに行くと店や人々の様子が変化するし、

相変わらず変わらないものも確認できる。

 

そうして、自分のカラダや記憶や細胞の中に、街が入ってくる。

漬物の様に、カラダがそれに漬かると関係が成立し、

お互いに影響し合う、街がヒトを育て、ヒトが街を育てる。

 

道行く人の中に、シエナを知る人も多く、シエナも道行く人を知っている。

シエナは白金台に育てられ、シエナも白金台を育ててきた。

これからも、私たちはこの街とともに生き、働き、

日々暮らしてゆくのだろう。

 

 

 

 

 

寄りみち