散歩シリーズ
攻撃的散歩
18.02.07
散歩と言えば、穏やかに樹々を眺めながら、
のんびりと鳥の声に耳を傾け、
ときに公園で遊ぶ子供たちに目を細め、
道行くカップルを微笑ましく感じながら、
ジョギングする人に道を譲り、
この愛すべき世界の空気を胸いっぱい吸い込んで、
今日の一日を振り返りながらゆっくりと歩く。
散歩とはそんなものだ、
というイメージがあった、
私が散歩初心者だった頃は。
でも、音楽にクラシックやジャズやロック、
演歌や歌謡曲もあるように、
散歩にだって様々なジャンルがある、
時には攻撃的な散歩も……。
それは、こころの奥に、
何か不穏なものが溜まって来るとやって来る。
錆びついた金属的なベース音が、
何処からともなく近づいてくる。
散歩の時間だ、
でも今日はモーツアルトではないようだ・・・。
錆びついた音、一音一音は、
近づくにつれ小さな蟻に姿を変え、
まるで樹を這い上がって行くかのように、
オフィスのジュータンから私へと近づいてくる。
そう言えば「黒い絨毯」という映画があったっけ。
蟻の大群が通ると、全て食い尽くし、
何も残らないという映画だった。
蟻はまず私の足首を硬める。
私は蟻を振り払うため足の指を交互に動かしてみる、
しかし、蟻はそんなことで振り落とされるわけはなく、
牙をむき、数を増やしながら、
脚を這い上がり、ふくらはぎ辺りで、
巣をつくり始める。
ベース音に不穏なギターがかぶさって来る
「う~っつ」
膝から下全体が何だか
モゾモゾとしてくる~~。
このままでは体中を
蟻に支配されてしまうかも知れない。
そしてセックス・ピストルズのような
暴力的ボーカルが私の頭の中でシャウトする。
お前は何かが溜まっている、
立ち上がってドアを開け、
さっさと外へ出ろ!
蟻を振り落とすまで帰るな、
散歩に出かけろ~!!
No Future ~~~!!
と言う訳で、
私は強制的に妻を伴い、
2時間色々な話を聞いてもらう
パンクな散歩をした。
すると、私の中の蟻の群れは
どこかへ消えていった。
次は、ジュリー・ロンドンで
夕暮れの白金を妻と歩きたい。