社長の部屋
002「 明日の風を纏う バスローブ 」
24.04.27社長の部屋
ケメコは
忙しかった今日一日を
振り返りつつ、粒子をシャワーで洗い流す。
外の世界でカラダに着いた様々な粒子
・あの人の顔色
・あの瞬間の認識のズレ
・言葉にならないザワツキ
外の世界には
様々な粒子がたくさん漂っているから
それをシャワーで流す。
カラダに残し、纏うものと
カラダから洗い流し、脱ぎ捨てるものに
より分けて
自分を
調える。
ケメコはシャワールームから出ると
籠に用意しておいたバスローブを
フワリと羽織った。
「 ん? 」
フワリと羽織ったはずなのに
なのに
な・の・に
何処かフワリこない・・・。
そのピンクのバスローブ
これは、確か・・・
少し急いでいたから
「まあ、悪くはないかなァ」で
選んだ。
ほかに選択肢がなかったので
充分にトキメかずに
買った。
今思えば
その時、余計な粒子を「背負った」
と言えば大袈裟だけど
しっくり来ないものを「纏った」
気がする。
翌朝
ケメコは、洗濯機からバスローブを出すと
「 ほぅ 」
少しピンクが黒ずんでいる。
ケメコはバスローブを
自分で少し黒ずませた。
状況に変化を与え
新しいバスローブを買い換えるための
キッカケを作るために。
「粒子」に働きかけ
洗濯機の中で、衣類を選り分ける。
ケメコにとって洗濯機は
単に洗うだけの機械ではない。
・選択する「機械」
・選択する「機会」
・明日のための「選択期」
でもある。
表向きの理由は
他の服の色が
バスローブに付いてしまったから・・・
と言うものだった。
でも、ケメコは知っていた。
自分が空気中から粒子を集めて
バスローブに何か変化を与えたこと
自分が、その現実を作り出したことを
ケメコは知っていた。
この世で起きている事は
世間で言われているほど
「自然でも偶然でもない」
自分が引き起こしているのだ。
1週間後
ケメコは気分の良い一日の終わりに
シャワーを浴びていた。
シャワー室から出ると
新しい白のバスローブを
フワりと羽織った。
新しいバスローブは
過去を背負ってモヤっとはしていなかった。
心地よく、軽く、フワッとしていた。
ケメコはバスローブを羽織り
そのままベランダに出て
明日の風を纏った。