SHIENA WORLD

散歩シリーズ

何処へ行きたいんですか?

18.12.08

白金台から目黒通りを
散歩しながら都ホテルへ下ると、
トヨタの販売店にクラウンがある。

私の世代は、
男の子はみんなクルマが好きでした。

「いつかはクラウン!」
というキャッチコピーは子供にも響いたっけ。

そうか~、
「クラウンに乗ったら、いっぱしの大人なんだ」と。

 

だからでしょうか、
私は18歳で直ぐに免許を取り、
夏休みアルバイトをして、
初めて自分のクルマを買いました。

ひと夏の血と汗の結晶
「愛と青春の中古カローラ」

 

嬉しかったですねぇ。
「ちょっと大人になっちゃったかなぁ~?」
みたいな。
「いつかはクラウンか?」
みたいな。

女性が初めて
ハイヒールを履くようなものでしょうか?

 

 

その後、時代は変化してバブルへ、
オジサンたちはメルセデスに心が向いたのか、
中途半端な高級感
と見なされたクラウンは売れなくなり、

トヨタは若者を取り込もうと
「ピンクのクラウン」にしてみたり、
さらに「そもそも免許をとろうよ!」
と若者に訴えないと、
クルマが売れない時代に。

私も17年の間クルマ手放していました。
別にカーシェアで充分か、
駐車場もいらないし……。

人の気持ちって、
変わるものですねぇ~。

あれ?
「いつかはクラウン」じゃなかったっけ?
「愛と青春の中古カローラ」は何だったの?

気が付くと、
私は「守り」に入っていました。

あの事件が起きるまでは……。

 

 

 

それは、スーパーの地下駐車場でした。

妻と二人でお菓子をいっぱい買って、
カーシェアの日産noteに乗ろうとしていると、

普通の中年女性がスーパーから出てきて、
隣のメルセデスに新鮮そうな野菜を乗せると、
颯爽と走り去っていったのです。

私たちと日産noteと
沢山のお菓子を置き去りにして……。

スーパーの帰り道、
私たちはポッキーをカジリながら、
同じことを考えていました。

「どうして、
私たちはメルセデスじゃないの!?」

 

 

それから3年後、
ポルシェが納車される日、担当に聞かれました。
「まず何処へ行きたいですか?」

 

「もちろん
スーパーで野菜を買うんです!!」

私たちは、間髪入れずに即答し、
いつまでも子供でした。

 

寄りみち